うつの人が周りから言われること
うつの人たち、もっと正確に言うと「うつになってカウンセリングを受けに来た人」たちが、小さい頃から家族や知人によく言われてきた、お決まりの言葉というのがある。
たとえば、「考えすぎ」「理屈っぽい」「頑固」「融通が利かない」。
ほかに、「何でそんなこともできないの?」というのは、何も手につかなくなるから当然としても、何かにつけて「そこは割り切らないと」と言われたことも多いはずだ。
もちろん、こういう風に言われる人が、すべてうつ的だとはいえないが。
特に最後の「割り切らなきゃ」という言葉は、うつになる人々の特徴をよく表しているといえる。
「割り切れ」というのは、言い換えると、「感情を切り捨てろ」という意味。
つまり、うつになる人は、自分の感情に背くことができないのだ。
もう少し厳密にいうと、ものごとの道理や矛盾に敏感で、筋が通らないと思えることには、どう振る舞えばいいのかすら分からない。
とにかく、いい加減・適当ということができない。
しかしこれは、人間として、断じて短所ではないと言いたい。
うつを乗り越えた人は、その後、本当によい人生を送れることが多い。
それは、人として筋の通らないことをやらずに生きてきた分、後悔が少ないからである。
自信を獲得するまでの道は確かに険しいが、ひとたび獲得すれば、誰に対しても、またお天道様に対しても恥ずべき点がないのである。
多くの精神医学書やカウンセリングの本で、うつの人のこういった特徴が、あたかも短所であるかのような書き方をされているが、こういった点を短所と思わせられてしまったこと自体が、何よりも大きくうつの病理を形成している。
そもそも、うつになる人に限らず、こういった基本的な性格は変えようとしても変わらないし、そんなことをすればするほど、どんどん泥沼にはまっていかざるを得ない。
うつを乗り越えるためには、勇気を持って、周囲の言葉に耳を貸さなくなる必要がある。
そして、自分は少数派でいいのだと、覚悟を決める。 (すぐには覚悟が決まらないのが普通だが……)
もっと頑固に、もっと融通が利かないようにする。
逆転の発想といえばそうだが、その方向にしか、進みようがない。
「あんたは考えすぎだ」と言われた場合など、「まだ考え足りないのだ」と置き換えるくらいでちょうどいい。
誰がなんと言おうと、つい考えてしまうときはとことん考える。
そう開き直れば、意外なことに、余分な考えこみはなくなるから不思議だ。